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柔らかく細かな砂を払い
どこかに行けるけど
どこにも行きたくない
この石の深くまで刻まれた低温
音もなく墓地に羽ばたく
強い憐情から胸に手を当てる天使たち
あの眼で
わたしを少しは射抜いてほしい
曇天
日は沈まない
空が近いから
わたしの鼻先まで
世界はどんどん左右に伸びていって
出口がどこまでも遠く
広く明るく感じる
怠惰であると責めないでほしい
どうやら
天使はわたしに気付くこともなく
やわく
その手で何かを包んでいる
小さな生き物がこぼれ落ちる
わたしより
命の短い生き物の
しずかに寝床を探すようすだけが
この世界の中であたたかい
天使たち
2019.9
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