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ここにはいないものを想うとき

それはやさしく

軽く傾けた頭を撫ぜ

あるいは狂信的な執着のもと

その姿の向こうへ焦点を当てる

裏切られることも 触れることもないくせ

私たちは

彼らの悲しい横顔を見る

私たちだけが流転

だからこそ潰えぬ姿勢で

その柔いものを守らんとする

その実はまぼろし

または

一億光年遠くの時空間

誰かひとりの脳シナプス反応

緑色の卑しい蛍光灯

湿気に巻かれたポスターか剥がれた壁画

これは悲恋?

等しいものは

探し求めるその気配

互いの顔は見えない

本当は何かが見えているのかもしれない

街に出ると

希薄な空が単なる光を浴びせかけ

背中を無遠慮に叩き前を見ろと叫ぶ

しかし私たちは呼応せずに思うのだ

ここにはいない

​その誰かのことを

私たち 

2014.11​ 

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