
水のカーテンを開けて
なんて 涼しいの……
雨に濡れたストリートに
黒いロングコートを着たあなたが立つ
私たちは
私たちにも
誰にも説明できない
不可思議な衝撃
過去と未来が混ざる
現在を生きるふたり
何かを物語ろうとして
どんな手を使ってでも、とつぶやいた
あなたの究極のエゴイズムは
涙に溶けて流れてゆく
嘆く私を諭す優しい声音
不老の美しいヴァンパイア
冷たい炎
透明な旋律がその指から流れ出すとき
青白い無限階段が現れ
私の黒い死が遠ざかる
私に付きまとう悪が詰まらなそうに離れる
あなたの言語は不思議
私もその言葉を話してみよう
不思議の連鎖が呼び寄せる雨
私の現実の目が開かれる
深い傷を癒す眠りが
あなたに訪れるように祈って
そしてまたカーテンが揺れる
風が吹いている
美しい雨の気配を伝える風が……
雨降りの街で
冷たい炎
2024.10
あなたの断片を探していた
男の姿でも女の姿でも
あなたは不変だと知る
哀れ 私はあなたに白いユニコーンを幻視する
だから現実世界に散らばったものから
あなたを知ろうとする
同性愛者
両性愛者
異性愛者
どの名称も私には必要なかった
私はあなたを見ている
テレビがあなたの姿を映し出す
私は夜の底からあなたを見ている
青い楽器と銀色に燃えるあなたを
この距離感を
この道筋を何と呼べばいいのだろう
運命を求める恋人たちを
共同体を求めるひとときの場面
リアリティ・ショーを見届ける
指先と足元はあやうく
月と霧が
何もかもを分からなくさせる…
けれども
運命の張り手で目が覚めるたびに
私はあなたを探していると気付く
透明な欲望が私に満ちている
運命を止める
あるいは発進させる
私は私の運命を生きている
魔術的な都市は何も言わない
この不可思議な問いに対する
答えが見つかるその時まで
私はあなたを探している
透明な欲望
2024.9